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2021/03号

姫路藩幕末シリーズ(8) 番外編「燃えよ剣」のロケ地、亀山本徳寺(2)

（姫路市亀山）

　前回は姫路ＦＣの支援作品「燃えよ剣」のロケ地となった亀山本徳寺のうち、本堂、大広間、中宗堂、表書院のそれぞれ内部を中心に取り上げたが、今回はそれ以外の大玄関や庫裏、大門などに注目していきたい。

　まず、映画「関ケ原」にも登場した大玄関。幕府の使いや本願寺の門主、姫路城城主の３人だけが使ったという特別な門、玄門（くろもん）の先にある唐破風の格調高い玄関で、中も板敷に白漆喰壁の設（しつら）えで、凛とした雰囲気を醸し出している。こちらも先の３人だけが上がるのを許されたというが、ドラマでどういう風に使うか、場面設定が楽しみなところでもある。

　庫裏は寺院の台所兼食堂だが、本徳寺の庫裏は県下でも最大規模を誇っており、たたきの土間とそれに続く４９畳の部屋に４室の座敷を付けている。４０ｃｍ角の２本の心柱で支える大きな吹き抜け構造になっており、黒光りする柱と梁の絶妙の組み合わせが見事で、こちらもぜひ映像に取り込みたいところ。昨年、ハリウッド映画の撮影が行われたのも記憶に新しい。

　大門は門柱のほかに控柱を４本建てた堂々たる四脚門で、本瓦を葺いた重厚感のある切妻造の屋根にも風格があり、施された組物など細部の意匠にも見るところが多い。

　大門を抜けると本堂が待ち構えているが、面白いのがその前に目隠し塀が設けられていること。実は大門の東には姫路城下と飾磨津を結ぶ飾磨街道が通っており、門前を通る通行人は下馬するなどして礼拝するのが慣例となっていた。ところがこれでは通行量の多いときには交通渋滞を引き起こす。で、それを回避するために視線を遮る目隠し塀が設けられたというのだが、本徳寺の往時の威光が偲ばれる。

　大門を出ると、寺院の格式の高さを表す五本の筋が入った五条築地（築地塀）が左右に巡っている。境内地ではなく民家が画面に入り込むので、時代物には使えないが、石畳が続くこのあたりも映像に捉えておきたいところだ。

　また、目隠し塀から本堂の前にかけては広場のようになっているが、ここも大河ドラマの「新選組」や「黒田官兵衛」に出てきたお馴染みのスポット。その本堂から北へ、大玄関、大広間、庫裏と続く重たげな本瓦葺きの諸堂宇の連なり、その甍が織りなす美は溜息が出るほどだ。

　このほか、英賀時代の遺構、見張り台の役目をしていたという城郭の隅櫓にも似た太鼓楼、唐様建築の経堂、巨大な梵鐘が掛かる鐘楼など、他にも映像に取り込みたい場所が随所にある。すでにロケ地として多くに人に知られている亀山本徳寺だが、「いまだ」と仰る方にはぜひロケハンをお勧めしたい。