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2020/05号

甦る「昭和」。記憶に寄り添う「思い出の動物園」──姫路市立動物園

(姫路市本町)




 「令和」という新しい時代に入っても、昭和ブーム、レトロブームは続き、あの時代を彷彿とさせるロケ地へのニーズも依然として高い。そこで紹介したいのが、「ようこそ、昭和の古き良き時代へ」と自ら語りかけているような動物園──姫路市立動物園である。

 世界文化遺産・姫路城の三の丸広場に隣接する動物園で、昭和26年(1951)12月1日の開園。まもなく開園約70年を迎えるが、開園当時の入園料が大人20円、小人10円に対し、今も大人210円、小人30円という手軽さもあってか、親子3代、あるいは4代で訪れているという入園者も少なくない。

 この70年の間に飼育されている動物もかなり入れ替わり、園舎にも手が加えられているが、概ねその雰囲気は「昭和の動物園」のままである。そのあたりが受けてか、戦後から昭和40年代を舞台にした石原さとみ、上野樹里、浅野ゆう子らが出演した2003年前期のNHKの朝ドラ「てるてる家族」でも、四人姉妹の長女・春子(紺野まひる)がデートする動物園のシーンに登場。市民の間でも話題になった。

 園内の様子はその頃とあまり変わりなく、正面入口を入るとフラミンゴがいて、左手にはカンガルー。赤く塗られた橋を渡るとヒグマやライオンの獣舎があり、右手奥にはキリンやシマウマ。左に回っていくとゾウの姫子がいて、少し戻るとラクダにカバ、それに4月か5月に北海道の旭山動物園に移されるというホッキョクグマがいる。

 打ちっぱなしのコンクリートの獣舎が並び、樹齢を重ねた大きな木々が生い茂る広く平坦な園内。パンダやコアラといった珍しい動物がいるわけでも、旭山動物園のように客を喜ばせる仕掛けや工夫があるわけでもない。昔のまんま。それが不思議なほど心地良い。目新しくもないし、動物の種類も個体数も限られているのに、なぜか愛おしいのだ。

 中でも最も「昭和」を感じさせ、懐かしい心持ちにさせてくれるのが城の内堀に面した遊戯施設コーナー。あるのは観覧車と飛行機、新幹線っぽい列車だけだが、いずれも設置されたのは昭和39年。東京オリンピックが開催された年で、ペンキこそ何度も塗り替えられているものの、乗り物の躯体自体は昔のまま。桜越しに姫路城が望める、二人が乗ればぎゅうぎゅうの屋根もない小さな観覧車。ゆったりと走る、開通当初の新幹線に似た列車。お城の堀を見下ろしながらぐるぐると回る飛行機……。観覧車も飛行機も列車も料金は200円と、これまた「昭和」なのが嬉しい。

 新型コロナウイルスの影響で5月30日まで休園中で、今後の開園についても不明だが、記憶に寄り添う「思い出の動物園」にぜひ足を運んでいただきたい。

〜 Presented by 姫路フィルムコミッション 〜

姫路は名作の宝庫!姫路で撮影された映画・ドラマをお家で見よう♪



 おうち時間が増えた今こそ、姫路が名作のロケ地に選ばれる理由を、作品を通じて、皆さんに知って頂きたい!「知ってる?あのシーンは姫路なんやで!」と、つい自慢したくなる姫路で撮影された作品を年表形式でご紹介いたします。
 作品の見どころをフィルムコミッションの担当者が紹介している記事も合わせてご覧ください。

 今回、記事掲載としてご紹介させて頂く作品は、フィルムコミッション設立前のものです。1954年に公開された映画「女の園」「007は二度死ぬ」「柳生一族の陰謀」にクローズアップしました。(一部物語の内容も含みますので、ご覧になる際はご注意ください。)
 是非とも、作品を通じて姫路の素晴らしさを再発見してみてください。
※作品につきましては、ネット動画配信サービスでご覧になることを推奨いたします。

映画「女の園」 1954年公開作品
監督:木下惠介 キャスト:高峰三枝子/高峰秀子/岸恵子/久我美子/田村高廣/東山千栄子

――戦後の移りゆく時代と取り残された封建的な思考との間で翻弄され生き抜く、
複雑な人間心理を細かく描写した名作の背景に映る故郷のお城――

<ストーリー紹介>
良妻賢母型女子育成を教育の理想とする京都の全寮制の名門女子大学を舞台にした作品。徹底した規律により学生生活を縛り、学業から恋愛まで介入し、自由な行動や思想を奪う学校。そんな理不尽な学校へ立ち向かっていく学生たちのストーリー。

<見どころ>
ヒロインの出石芳江(高峰秀子)は、姫路市出身の新入生。
ヒロインの実家は、当時の西松屋の本店(呉服屋)で撮影されており、冬休みに恋人と待ち合わせるシーンでは、当時の大手前通りと姫路城が映ります。
恋人との別れを惜しむシーンがなんともエモーショナルで、西の丸の石垣を走るシーンや恋人が手を振る汽車から遠のく姫路城や姫路の街、そしてシンボルの天守最上階からハンカチで手を振るヒロインの健気な情景が、音楽の盛り上がりと共に感動を誘います。当時の姫路の街並みを伺うことができる大変貴重な作品です。変わらない風景がいくつもあるのは、歴史ある姫路ならではだと、街の魅力を再実感できます。今と昔の街の違いや変わらないものを楽しんで見てみてくださいね。


映画「007は二度死ぬ」1967年公開作品
監督:ルイス・ギルバート キャスト:ショーン・コネリー/丹波哲郎/浜美枝 他

――ジェームズ・ボンドが姫路城の上空から颯爽と登場! 世代を跨ぐ人気シリーズ。
忍者道場化した姫路城に、ボンドガールと歩いた将軍坂も必見!――

<ストーリー紹介>
宇宙にある米ソのカプセルが、謎のロケットに捕獲されて、行方不明になるという事件が続々に発生。イギリスの情報部は、その妨害をしているロケットの基地が日本にあることを突き止めた。真相究明のため、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)を日本に派遣する。日本の秘密諜報機関長田中(丹波哲郎)と秘書アキ(若林映子)の協力を得て、ボンドはスペクターの秘密基地に潜入するが……。浜美枝も出演するシリーズ5作目。

<見どころ>
劇中、姫路城は、丹波哲郎演じるタナカが率いる忍者道場として登場。
お城が忍者道場という設定にも驚きですが、今じゃ実現できないヘリコプターでの姫路城上空の回遊に、三の丸広場への着陸と、こんな迫力のあるシーンは、今も昔も実現が難しい大変貴重なワンシーンです。
当時、間近で見守っていたスタッフのことを思うと、緊張で胃が痛くなる担当者ですが…
同時に、セットではなく本物だからこそ伝わるものがそこに描かれていると、再実感できる作品です。是非、ご覧ください。



映画「柳生一族の陰謀」1978年公開作品
監督:深作欣二 キャスト:萬屋錦之介/千葉真一/松方弘樹/西郷輝彦/三船敏郎/大原麗子 他

―― 豪華名優とともに共演した姫路城
今も受け継がれるロケーションの至宝と再実感できる作品――

<ストーリー紹介>
 江戸城大奥にて亡くなった徳川二代将軍秀忠の不信な死に三代将軍の座を、秀忠の長男・家光(松方弘樹)を推すものと、亡き秀忠同様、次期将軍には忠長(西郷輝彦)をと願うものに分かれ、大阪夏の陣以来、徳川家には再び動乱の兆を見せ始めた。
 家光を推す松平伊豆守は、将軍家剣法指南役の柳生但馬守宗矩(萬屋錦之助)を訪ね、今後のことで相談を持ちかける。
 やがて、権力に生きる柳生一族の存続を賭けた陰謀が、父但馬守と息子の十兵衛(千葉真一)が戦う宿命を迎える姿を描いた作品。

<見どころ>
 巨匠・深作欣二監督がメガホンを取られた時代劇の名作で、今もリメイクされて末長く愛される作品です。劇中で姫路城は、駿府城に小田原城と姿を変え、登場します。
 西の丸では、次男忠長とお国の悲しき別れを描き、物語を盛り上げるクライマックスで堂々とナレーションの背景に登場する姫路城には、幾度となく時代劇に登場した姿を目にしてもまだ、初見のように鳥肌が立つ感動を覚える迫力。
 最後は名優でもなく、お城の情景で終わりを告げる、俳優にも負けない画力を肌で感じる作品です。
 作品の見どころとして、萬屋錦之助さんに、千葉真一さん、松方弘樹さん、そして三船敏郎さんと錚々たる豪華キャストがご出演されています。その中でも、キラリ輝いていた若かりし頃の真田広之さんの、身のこなしが軽やかで、アクロバティックなアクションシーンにも是非ご注目ください。

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