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2019/12号

駅（駅舎）のある風景(4)

北条鉄道法華口駅・播磨下里駅（加西市）

　姫路・播磨の駅（駅舎）シリーズの最後を締めくくるのは、加西市にある北条鉄道の法華口駅と播磨下里駅。

　北条鉄道は大正４年（１９１５）に播州鉄道の北条支線として開業し、国鉄北条線を経て昭和６０年（１９８５）に第三セクター・北条鉄道として営業を始めた鉄道で、北条町駅（加西市）から粟生駅（小野市）までの１３．６〓を結び、途中に播磨横田、長（おさ）、播磨下里、法華口、田原、網引（あびき）の６駅を擁している。

　いずれも地域の特徴を生かした駅舎になっているが、このうち国登録有形文化財に登録されているのが、長駅、播磨下里駅、法華口駅で、ここでは播磨下里駅と法華口駅を紹介しておこう（もう一つの有形文化財、長駅も播磨下里駅と同様、漆喰壁に羽目板を巡らせた木造駅舎内部の雰囲気が昔のままだ）。

　まず、のどかな田園風景の中に、素朴で味わいのある木造駅舎がぽつねんと佇んでいるのが播磨下里駅。切妻屋根に板張りの木造駅舎は大正４年（１９１５）に開設されたとされ、ほとんど開業当時のままの駅舎が残されている。

　駅舎入口に据えられた自動販売機はいささか残念だが、駅舎の内部には木枠の切符窓口や木製のウンター、ベンチなどが配され、木のドアを開けた先にある待合室もレトロそのもの。木枠のガラス窓やガラス戸、置かれている机も昔の小学校の机を思い出させ、どこか懐かしい。少なくても戦前までは時間を戻せるに違いない。


　次に紹介するのは法華口駅。ここも昔ながらの板張りの木造駅舎で、近年、多少手が加えられて、屋根瓦の一部が新しくなったりしているが、駅舎入口に立つ電柱は昔ながらの木の「電信柱」で、それだけでも映像の取り込みたくなる。

　戦前の右から横書きされた「ほっけぐち」の文字を、戦後になっていったん消した上で左から「ほっけぐち」と重ね書きしている駅名標にもどこか味わいがある。

　駅舎内部は今は米粉パンの駅舎工房「モン・ファボリ」になっており、時計の針を戦前に戻すことはできないが、ボランティアの女性駅長がいることでも知られている。

　実は法華口駅の近くには、太平洋戦争末期に設立された海軍航空隊基地の鶉野飛行場と戦闘機の組み立て工場跡があり、有志の皆さんの手によって爆弾庫や巨大防空壕、飛行場滑走路、対空機銃座などの戦争遺跡が今も守られている。毎月第１・第３日曜日には鶉野工場で製造されていた「紫電改」の実物大模型も公開されており、法華口駅に公開会場の案内マップも用意されているので、併せてロケハンしてみてはいかがだろう。