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2019/04号

映画「引っ越し大名」・松平直矩ゆかりの地(1)　播磨国総社

（姫路市総社本町）

　土橋章宏の時代小説『引っ越し大名三千里』を原作に、昨年の5〜6月に姫路城の各所で撮影を行い、今年の8月30日から公開予定の映画「引っ越し大名！」。幕府から生涯に7度もの国替え（引っ越し）を命じられた実在の元姫路藩主・松平直矩をモデルに、莫大な費用がかかる無理難題の引っ越しをしなければならなかったお家の一大事を救うべく、あらん限りの知恵と工夫で乗り切ろうとする姫路藩藩士たちを描いた物語で、星野源、高橋一生、高畑充希ら豪華キャストが出演している。

　直矩は徳川家康の次男で、豊臣秀吉の養子になっていた松平（結城）秀康の第五子・直基の嫡男。寛永19年(1644)の生まれで、2歳のときに直基が越前大野藩から出羽山形藩に移され、これが直矩にとっての最初の引っ越し。直基はさらに慶安元年(1648)に山形藩から播磨姫路藩に国替えとなるが、一度も姫路に入ることなく江戸で病死。このとき跡を継いだ直矩はわずか7歳だったため、西国大名ににらみを利かす姫路藩主には荷が重すぎるとの理由で、翌年、越後村上藩へと国替えに。

　さらに寛文7年(1667)数え年で25歳になっていた直矩は再び姫路藩に国替えとなるが、天和2年(1682)に親戚筋の越後高田藩のお家騒動に巻き込まれ、今度は豊後日田藩に国替えに。ただし、姫路15万石から日田7万石に減封となるため、いかに経費を抑えて引っ越しするかが大問題で、このときに活躍するのが豪華キャストの3人というわけである。

　このように姫路藩主に2度なり、54歳で亡くなるまでの間に幕府から７度の国替えを命じられ、「引っ越し大名」と呼ばれた松平直矩だが、姫路でゆかりが深かったのが播磨国総社射楯兵主神社である。

　播磨国総社は姫路城鎮護の社でもあり、歴代藩主の崇敬を受けてきたが、橋本政次著の『姫路城史』によれば、寛文7年8月22日に姫路城に入った直矩も直ちに総社へ参拝している。

　また、延宝元年(1673)は総社の臨時祭（三つ山大祭）に当たったが、直矩は前年から準備し、総社の社頭内外の井垣を修復再興。同9年に側室に女児が誕生した際は総社へ絵馬を奉納するとともに、文人大名らしく自ら和歌を詠じて奉納している。

　また、延宝7年(1679)7月には二男基知が誕生し、総社に宮参りを行うとともに、直矩の3代前の姫路藩主・松平忠明以来閉鎖されていた鳥居先門（表参道に立つ石鳥居南側の中堀＝現国道2号＝の先にあった）を再び開き、参拝の庶民を自由に出入りさせた。これ以外にも拝殿の普請を行うなど、天和2年に豊後日田藩に国替えになるまで、直矩は播磨国総社と深い関わりを持っていたのである。