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2018/09号

復元された陣屋や美しい参道。そのままロケに使える深い味わい

（佐用郡佐用町乃井野）

　ここ数年、姫路市内のロケ好適地に絞ってロケハン案内をしてきたが、今回は兵庫県西部の、姫路から岡山県の津山方面に向かう姫新線沿線にある佐用町三日月（旧佐用郡三日月町）を紹介したい。

　三日月は藩政時代には三日月藩森家一万五千石の城下で、小藩ゆえに城が築かれることはなかったが陣屋が置かれ、その足元には家臣たちの屋敷が建ち並んでいたという。陣屋は近年になって建物が復元され、内部が見学でき、なおかつ古い絵図や出土品などを展示する「三日月藩乃井野陣屋館」として蘇っている。

　復元なので建物自体の新しさは否めないが、陣屋の遺構として唯一残る出格子を備えた物見櫓を中心とした中御門、通用御門、石垣や堀の並びは歴史ドラマにも充分使えそうである。

　さらにロケハンをお勧めしたいのが陣屋館に隣接する列祖神社と廣業館。列祖神社は織田信長の近習・森蘭丸の父である戦国武将の森可成ら、藩主森家の先祖を祀る神社で、隣にはそれらしき石組みが今も残る築山式の枯山水庭園の跡が見られる。

　一方の廣業館は三日月藩校の廣業館から名を採り、明治時代に廣業小学校として使用されていた建物で、保存のために後にここに移されたものだそうだが、長い歳月を風雪にさらされた趣深い味わいがある。今は柔道場として用いられているようだが、出入り口の戸も窓も木枠で、明治から大正の頃の校舎、学び舎としてドラマに使えそうである。

　最後にお勧めしたいのが、列祖神社や廣業館に隣接する日岡八幡宮。京都の石清水八幡宮の播磨別宮として勧請されたと伝わる古社で、現在の本殿は明暦2年（1656）に建立されたもの。細部の意匠にも優れ、鬱蒼とした木々を背景に佇む姿は時を越えた存在感を見せつけている。

　この神社で筆者が何よりもアピールしたいのが神社の麓から境内に向かう参道の階段まわりの美しさ。長い石段で、左右に白漆喰の土塀が続き、その背後に樹齢を重ねた大木が連なり、風格ある山門（随神門）、さらには本殿のある境内へと続くのだが、目立つ人工構造物もないので、すぐさま歴史ドラマの舞台となり得るだろう。

　閑静で、鳥の声、木々の枝葉を揺すぶる音のほか耳に届くものはなく、筆者が知る限り、播磨でも一、二を争う得がたい雰囲気の参道であり神社である。