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2018/05号

昭和〜平成を歩んだ文化センター。懐かしさと意外性に富んだ建物の魅力

（姫路市西延末）

　手柄山中央公園の一角にある姫路市文化センター。本格的な「文化の殿堂」として昭和４７年（１９７２）にオープンした地下１階、地上５階の建物で、大ホール、小ホールほかを備え、平成元年（１９８９）には大ホールの舞台とほぼ同サイズのリハーサル室を増設。まもなく半世紀近くを迎えようとしている老舗の文化施設である。

　縦、横、斜めの直線と無機質な幾何学面で構成されたフォルムはいかにも斬新な「昭和の頃の最先端」を彷彿とさせ、今でこそ長い風雪を経て色あせた感はあるが、竣工まもない頃はまさに「白亜の殿堂の出現」と話題を呼んだものである。

　階段を上った先のプラザと呼ばれる広場の奥に入口があるが、ここを抜けると高さ２０メートル近くはあろうかという当時流行った吹き抜けの大空間で、天頂の明り取りから柔らかな陽射しが注ぎ込んでいる。

　ここから大ホールと小ホールに向かうが、大ホールは１６５７席を擁する播磨地方最大のキャパシティを誇っており、電動迫り上げ式のオーケストラピットと迫り、常設の花道も備えており、大劇場の風格は十分。近年のホールが一定の座席数を確保しながら視距離を短くするために、客席の傾斜角度に工夫して舞台に対して「近く、高く」を試みているのに対し、こちらはさしずめ「遠く、低く」で、いかにも昭和のホールを感じさせている。

　テレビのサスペンスドラマでは、舞台やホールでの殺人事件や不審死をテーマにした話も少なくないが、間口１８ｍ、奥行１６ｍ、高さ８ｍもある広い舞台、床が昇降するようになっているオーケストラピットなどは、ドラマの”いい役どころ”を演じそうである。

　これらホール以外にも撮影スポットは数多い。その代表が増設されたリハーサル室棟にある３つの会議室と貴賓室で、会議室はいずれも緑豊かな修景池に臨んでおり、保養地の研修施設のイメージにぴったり。また貴賓室もバブルの時代に増設されたものだけに、折り上げ風になった天井や、調度品のしつらえなども贅沢そのもので、ビジネスシーンを豊かに彩ってくれそうである。

　また、修景池の緑越しに望むリハーサル室やそこに至る通路は、文化施設とは次元の異なる宿泊その他の施設にも見え、いろんな場面設定ができそうである。

　この文化センター、２０２１年度に姫路駅近くに新たに「（仮称）姫路市文化コンベンションセンター」が開館するためお役御免となるが、その前に一度ロケハンをお勧めしたい「意外性に富んだ」建物と言えるだろう。