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2017/06号

巡礼道沿いに続く寺社仏閣。羽柴秀長や千姫とのゆかりも

（姫路市飾東町）

　姫路市飾東町佐良和（さろお）。のどかな田園地帯だが、そこを東西に抜けるのが、かつての巡礼道（丹波街道）。巡礼道とは西国三十三ヵ所観音霊場を巡る経路のことだが、第二十六番札所の法華山一乗寺と第二十七番の書写山圓教寺を結ぶ巡礼道がここを通っており、右面と左面に「志よしや」「ほつけ」と刻まれた文化八年建立の道標も残っている。

　ただし、今回紹介したいのは巡礼道ではなく、巡礼道沿いにある寺社仏閣で、１つが歳徳神社。羽柴秀吉の弟で、一時期姫路城主でもあった羽柴秀長が、姫路城の鬼門にあたるこの地に鬼門封じの神を祀り、歳徳神社と称したといい、「姫路城之鬼門守護神」と刻んだ大きな石碑が立っている。

　山の斜面に拓かれた境内は狭く、麓の歳徳神社から参道の石段をたどって奥の院玉姫神社に向かうが、参道には鮮やかな朱色の鳥居が続く。京都の伏見稲荷大社には到底及ばないが、なかなか印象的である。

　２つ目が佐良和の氏神である大歳神社。大鳥居や長い石段、ぎっしりと絵馬が奉納された拝殿など、コンパクトながら味わいのある神社だが、かの千姫ゆかりの神社でもある。

　大坂夏の陣の後、徳川四天王の一人である本多忠政の嫡男・忠刻に嫁いだ千姫は、本多家の姫路転封によって今からちょうど４００年前の元和３年（１６１７）に姫路城に入り、長女お勝と長男幸千代を授かるが、幸千代はわずか３歳で他界。忠刻と千姫の間にはその後も後継ぎとなる男子が生まれなかったので、忠政は男子出生を祈願して大歳神社に社領３石を寄進したと伝えられている。

　歴史とは別に映像的に魅力があるのが大歳神社と歳徳神社の奥の院玉姫神社を結ぶ「文学の小径」。玉姫神社の修復に際し、資材の運搬のために切り開かれた裏参道で、左右には竹林が続き、歴史ドラマにも充分使える時代を超えた雰囲気が残っている。

　その文学の小径のすぐ下にあるのが黄檗宗の寺院・吉祥寺で、禅宗寺院らしい中国風の山門が目を引き、その脇には「不許葷酒入山門」と刻んだ石碑が立っている。

　さらに巡礼道を西に向かうと花田町小川になるが、ここにも同じ黄檗宗の定額寺がある。いかにも禅宗様式といった感じの本堂や庫裏、山門、鐘楼なども風格に溢れ、背景の切り取り方次第で多様な使い方、見せ方ができそうである。

　今年は忠刻・千姫姫路入り４００年ということで、地元では千姫が話題になっており、巡礼道や西国街道などの古道もちょっとしたブーム。そのあたりも併せてアピールしていただきたいところである。