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2017/03号

城下町の面影と出会う船場川西岸の「船場・城西」地区

　前回このコーナーで姫路城下を流れる船場川を紹介したが、その川の西岸に開けたのが「船場・城西」地区で、かつての城下町の面影を少なからず残している。

　船場川西岸の国道２号より南側が船場地区、北側が城西地区になるが、船場で外せないのが「御坊さん」の名で親しまれている船場本徳寺。姫路市亀山にあって、ＮＨＫの大河ドラマ「新選組」や「軍師官兵衛」、映画「本能寺ホテル」などのロケ地となった浄土真宗本願寺派の亀山本徳寺に対し、こちらは真宗大谷派の別院。亀山本徳寺に比べると諸堂が少なく、周囲に高層の建物が多いので、時代物には使えそうもないが、市街地に残る古刹という視点で捉えれば、いろいろな展開が考えられる。

　古刹といえば、城西にも景福寺がある。曹洞宗の寺で、姫路藩主酒井家の菩提寺。境内には１１代将軍徳川家斉の娘で、藩主忠学（ただのり）の正室となった喜代姫らの墓もあるが、景福寺山の緑を背景に本堂や地蔵堂、山門などが泰然と佇む姿は実に壮観。切り取りようによっては様々なシーンが描けそうだ。

　城西にはもう一つ、見星寺（けんしょうじ）という臨済宗の尼寺もある。藩主本多政朝が祖母徳姫（徳川家康の嫡男信康の正室。次女熊姫が政朝の父忠政に嫁いでおり、千姫の義理の祖母にあたる）の菩提を弔うために建立したと伝えられ、小さな禅寺ながら心が洗われるような趣をたたえている。

　こうした寺院とは別に、城西地区には古い城下町の遺構や町家が随所に残っている。特に旧西国街道の道筋にあたる龍野町は、羽柴秀吉が姫路城主だった頃に楽市の制をしき、城下町としての整備を図った古くから繁栄した町。近年はマンションなどが目立つようになってしまったが、龍野町や農人町、西新町あたりには江戸時代の建物と伝わる初井家（非公開）を初め、漆喰壁に虫籠窓や格子窓、卯建（うだつ）の上がる町家や商家がそこかしこに残り、レトロな洋館風の建物もある。

　城下町の遺構としては船場川舟運における、木炭などの荷の積み下ろし場であった材木町の舟入川と炭屋橋があげられる。農人町のノコギリの刃のようにジグザグになった街路も、城下に侵入してきた敵勢を混乱させる、城下町の出入口に特有のものとされており、あちこちで城下町姫路の歴史の一端に触れることができるだろう。

　ほかにも吉田町や米田町には、江戸時代の創業と伝えられる味噌麹の専門店や、姫路仏壇の伝統を受け継ぐ仏壇店などもあり、城西地区も船場地区も「城下町を歩こう」的な情報番組にはぜひ登場させたいエリアである。