メールマガジン

2016/11号

セピア色の思い出と歩く廃線跡(1) 国鉄飾磨港線

（姫路市飾磨区）

　メルマガではこれまで、映画やドラマのロケにお薦めしたい候補地を「ロケハン案内」の形で取り上げてきたが、今回と次回は少し趣を変えて、市内に残る廃線跡をご紹介したいと思う。今回取り上げるのは旧国鉄の飾磨港線跡。正しくは播但線（現ＪＲ）の一部で、明治３９年（１９０６）に飾磨（後に飾磨港）―和田山間全線が開通した播但鉄道がルーツ。その後、国鉄となり昭和６１年（１９８６）に廃線となった路線である。

　多くの廃線跡が車の行き交う道路に姿を変えているのに対し、飾磨港線の廃線跡は貨物専用駅だった手柄の姫路市場駅から南へ、県立飾磨工業高校あたりまでが遊歩道として整備されており、今なお往時を偲ぶことができる。

　廃線跡の遊歩道はほぼ直線を貫き、姫路バイパスの高架橋の下を潜ると、旧国鉄亀山駅を偲ばせるホーム状のモニュメントが設けてあり、道路際の倉庫には「国鉄姫路駅前」と記された看板も掛かっている。

　遊歩道はなおも南西方向に伸び、市立飾磨中部中学校の横を抜け、かつては跨線橋だった山陽電鉄網干線の橋の下を潜っていく。橋を支える擁壁は国鉄当時のままで、レトロな味わいがある。

　そこからさらに南に下り、国道２５０号を渡ったところに飾磨港線と新日鉄広畑製鉄所の貨物専用の引込線との分岐点があり、飾磨港線の鉄橋跡の橋台と引込み線の赤くペイントされたガーター橋が今も残り、引込線の脇には何本かの枕木が立っている。分岐点から左が飾磨港線の跡で、途中までは舗装されているが、その先は草に覆われたかつての線路の盛土が続き、県道との交差点の手前にはコンクリートの橋台が残っている。

　そこを過ぎると廃線跡の痕跡はないが、姫路みなとドームがあるあたりが飾磨港駅があったところで、当時の写真を見ると構内は広く、港に陸揚げされた貨物が列車で運ばれていったようだ。貨物駅に欠かせなかった日本通運の社屋も見える。

　再び分岐点に戻り、今度は右へ新日鉄広畑製鉄所の引込線の跡をたどっていく。当時の線路の盛土が続き、しばらく進むと船場川に架かる鉄橋が残っている。レールはなく、今は歩行者や自転車用の橋になっているようだが、貨物列車の荷重に耐えられるよう分厚い鋼材を用いており、今年から撤去工事が始まるとの案内が出ている。

　さらに進んでいくと廃線跡は製鉄所の構内に入ってしまい、跡をたどることはできないが、そのまま西に向かって夢前川まで出るとここにも引込線の鉄橋が残っている。いずれは撤去されるのだろうが、「鉄ちゃん」ならずとも、一つまた一つと、時代と人々の思い出が消えていくのはやはり寂しい。