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2016/02号
姫路城のビュースポット。目も眩む石段も魅力の「男山」
(姫路市山野井町)
姫路城のすぐ西に小高い山がある。姫路城がそびえ立つ「姫山」に対し「男山」と呼ばれ、まるで「夫婦(めおと)」のように寄り添っている。山裾には水尾神社があり、中腹には千姫天満宮と男山八幡宮がある。千姫天満宮は、徳川二代将軍秀忠の娘で、姫路城主本多忠政の嫡男忠刻に嫁いだ千姫が建立した神社で、自らが信仰していた天神(菅原道真)の木像を祀り、姫路城内の西の丸長局から遥拝したという。
一方の男山八幡宮は、赤松貞範が姫山に初めて姫路城を築くとき、城の鎮守として京都の石清水男山八幡宮より分霊を勧請して創建したと伝えられる。それだけに歴代姫路城主の崇敬もことさら篤く、境内には榊原政邦や松平直矩が寄進した石鳥居が残っている。
こうした由緒に包まれた男山だが、映像的な魅力としては、なんといっても姫路城を望む景観の素晴らしさが挙げられる。山頂の男山配水池公園から連立式天守の大天守や小天守、西の丸の櫓などが指呼の間に望めるのだ。姫路城のビュースポットを取り上げた「姫路城十景」の中でも、その雄大さは特筆もので、カメラを右にパーンして映し出す市街地を俯瞰する構図もなかなかの味わい。ライトアップされた姫路城と市街地に広がるネオンや灯り……。この場所が夜景スポットとして人気が高いのも頷ける。
男山配水池は、少し離れた住宅街の中にある町裏水源地とともに昭和4年に竣工している。水源地から送られてきた水道水を貯え、山の急斜面を利用した水圧で市内中心部に水を送った給水施設で、「近代化産業遺産」でもある。今は公園化されているが、古びた門柱なども見られ、レトロな雰囲気も残っている。
この山頂に向かって山の南側から石段が伸びているのだが、その数はなんと194段。上から見下ろすと目も眩むような急傾斜で、サスペンスものにお誂え向きのロケーションになっている。
石段は山の北側にも設けられている。南側ほど急斜面ではないが、それでもなかなかきつい勾配で、近隣の高校の運動部のトレーニングによく使われている。
石段を降りきると大野川という小さな川が木々の間を縫って流れている。少し上流に桜並木があり、春には水面を桜の花びらが覆い、なかなかの風情を見せてくれる。市街地を流れる川とは思えず、このあたりも絵になるところだ。
いずれにせよ、男山からの姫路城や市街を望む景観は、どのような使い方であれ得がたい彩りを添えるし、緑に包まれた急峻な石段は青春ドラマのワンシーンを飾ることができる。姫路城からも近いし、ぜひロケハンをお薦めしたい。