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2015/07号
描き出せる富裕層の日々の営み。大正初期建築の和洋折衷の豪邸
(姫路市網干区興浜)
昔ながらの町家が点在し、「昭和」の面影が色濃く残る興浜地区の中でも、ひときわ異彩を放っているのが3階部分に望楼がある山本家住宅。平成元年に市の都市景観重要建築物に指定された貴重な文化財である。向かって右側が明治初期に建てられた主屋だが、ロケ地として紹介したいのは主に来客用だったと考えられる望楼を備えた左側の別館。網干町長、網干銀行頭取などを務めた山本真蔵氏が大正2年から7年にかけて建てた和洋折衷の建物である。1階を幅の狭い板下見板張り、2階を黒漆喰の塗り壁と、階高によって異なる壁を用い、そこに縦長の上げ下げ窓や鎧戸を配する外観デザインは、当時の一種の流行だったようである。
建物内部は、唐破風の玄関ポーチから中に入ると大理石の床が広がり、それだけでも軽い眩暈を覚えるが、左手の応接室にも驚かされる。曲線と直線を組み合わせ漆喰彫刻を施した鮮やかな折上天井、精緻な幾何学模様を描き出す寄木細工でできたような床、今ではとても入手不可能な厚手の織物のような生地を使ったドレープカーテン、細かい彫刻を施した大理石を使ったマントルピース、さりげなく置かれた高級感あふれる椅子やテーブル……。応接室というより富裕層が集まるサロンのような雰囲気で、このままで何も手を加えずに撮影に入っていけそうである。
書庫を設けた隣室の書斎も魅力がある。南面する窓はステンドグラスが用いられた出窓になっていて、机をはじめ置かれている調度も、壁やドアも細部まで手の込んだものばかり。まさに贅沢の極みで、その重厚さ、グレード感に圧倒されてしまう。
1階の奥は別棟の平屋。二間続きの書院造の和室になっており、床も床柱も棚も欄間も、いかにも匠の手になるものという雰囲気で、この場で展開可能ないろんなシーンを思い浮かべてしまう。
さらに、別棟に至る廊下の天井にはステンドグラスがはめ込まれ、洗面所には大理石のシンクが用意され、壁に大きな貝殻が装飾と埋め込まれるなど、仕様の1つ1つが凝りに凝っており、そこに大工さんや左官職人の遊び心も垣間見え、「お金をかける」の本来の意味が朧げながら判ってくる。
紙数に限りがあるので駆け足になるが、応接室や書斎がある2階部分にも洋室や宴席の広間として使ったであろう二間続きの和室があり、3階の望楼も中は広くないが、目の前に揖保川を望むなど、その名の通りの役割を果たしていたようだ。
ざっと見てきたが、高級感あふれるインテリアや調度品もそのまま残されているので、谷崎潤一郎や山崎豊子らの小説に登場する大正から昭和初期にかけての富裕層の住まい、あるいは別荘、別宅という設定で思う存分その魅力を発揮してくれるに違いない。ぜひロケハンをお薦めしたい。
姫路へ行こう!今月の話題はこれ
【日本最大級12スクリーンの映画館 アースシネマズ姫路が誕生】
今夏、JR姫路駅前に開業する商業施設「テラッソ姫路」の4〜7階に、姫路初の大型シネコンにして、日本最大級のスクリーン数を擁する「アースシネマズ姫路」オープンします。
このシネコン(複合型映画館)は、全12スクリーン、約2000人を収容。ドラマチックなシネマサウンドが体験できる「ドルビーアトモス」のほか、最新スピーカーシステム「クリスティ・ヴィヴ・オーディオ」、上下左右に椅子が動くほか、風や水、空気や香りなど、いわゆる4Dを体感できるライド型シアター「4DX」(関西初!)を導入。
JR姫路駅東口すぐ、キャスティ21コアゾーンBブロックにオープンするこのシネコン。平成の大修理を終えて賑わう世界遺産・姫路城近くに、新たな話題のスポットが誕生します。
[アースシネマズ姫路]
2015年夏(予定)オープン!
住所:姫路市駅前町キャスティ21コアゾーンBブロック(テラッソ姫路内4〜7F)
URL:http://earthcinemas.jp