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2015/01号
シイの天然林の中に佇む神社と風格あふれる寺院
(姫路市夢前町新庄)
先月号では夢前町新庄にある、かつての大庄屋の屋敷、佐野邸を紹介したが、そこから歩いても10分ほどの距離にあるのが今回紹介する円山神社である。もともと新庄地区は日本三彦山の1つとして有名な雪彦山の麓にある賀野神社の氏子だったが、詣でるにはかなりの距離があったので、毎日でも参拝できるようにと分霊を勧請して建立されたと伝えられている。三間社流造り、銅板葺(元は桧皮葺)の本殿は、手法に優れた古建築として評価され、姫路市指定文化財になっている。
加えて神社の周囲にはシイの天然林が広がっており、風致景観が優れていることから県の環境緑地保全地域にも指定されているが、そうした神社と天然林が織りなす景観の美しさが一番の魅力といえる。
シイなどが生い茂る木漏れ日の中を、ところどころ苔むした参道の石段を歩いていくと、その先に神仏習合の名残なのか、あまり見たことのない形をした神社山門が待ち受け、やがて空間を切り取ったような社殿の前に出る。ふと見上げればどこまでも青い空が広がり、これだけでも得がたいシチュエーションだが、石段横の同じように社殿へと続く木の根を浮かび上がらせた土の道にも魅力がある。石段には数少ないながら街灯があるのだが、こちらの土道には人工構造物が一切なく、時代劇の撮影にも十分対応できそうである。
本殿の背後にも道幅3メートル弱の裏参道があり、こちらは簡易舗装が施されているが、木立の影がより濃く、江戸時代の街道のイメージを引き出せそうだ。
また、神社の表参道の入口にある鳥居の横手には「大東亜戦争 記念碑」の碑が立っており、先が尖った四角錐状の墓標ばかりが並ぶ軍人墓地になっているようで、何かしら圧倒されるものを感じる。
さらに付け加えれば、墓地を挟んだ円山神社の東側には天台宗の古刹、雪彦山満願寺にも味わいがある。横に長い質素な造りの山門の奥に風格ある鐘楼門が続き、その先に唐破風の玄関を備えた本堂。小高い台地上にあるので見晴らしもよく、寺院とは思えない開放感に包まれている。
前回の佐野邸にしろ、今回の円山神社や満願寺にしろ、山裾にあって閑静そのものだが、県道姫路大河内線からわずか数分入ったところに所在し、姫路の中心部からでも車で30分余りという足回りのよさにも魅力がある。
姫路へ行こう!今月の話題はこれ
修正会(鬼追い)
昨年、放送された大河ドラマ「軍師官兵衛」のロケ地やNHKの「ゆく年くる年」でも生中継され、何かとHOTな話題が続く書写山圓教寺にて、毎年恒例「修正会(しゅうしょうえ・鬼追い)」の時期がやってきました。
鬼追いとは、毎年1月18日(もとは旧暦1月17日夜から18日朝まで)書写山圓教寺の修正結願の日に、不動明王の化身とされる青鬼(乙天護法童子)と毘沙門天の化身とされる赤鬼(若天護法童子)が年頭行事として邪鬼を追い払う鬼の舞いを山頂の白山権現社舞殿と摩尼殿内陣で行うことをいいます。
宝剣を握る青鬼・赤鬼は、槌を背負い松明を翳し、鈴を鳴らして、四股を踏むように四方四維の大地を踏みしめるのですが、これは大地を浄めて五穀豊穣を祈る行為です。この式は、圓教寺を開いた性空上人(しょうくうしょうにん)の没後に始められ、千年以上も続いています。
ここで、鬼追いに参加される前に、豆知識と流れをご紹介致します。修正会に用いられる面は、実は鬼そのものではなく、山の守護神である乙護法・若護法両童子の面です。そして、「鬼追い会式」の鬼は迎春を意味します。
式は、山の僧による唄・散華・問答・読経といった次第で進み、やがて摩尼殿の扉がバタバタと閉じられれば、いよいよ鬼追いの始まりです。もともと、夜通し行われていたため、夜を再現するために扉を閉めて行われるのが鬼追いの特徴ともいえます。
鬼がたくましく四股を踏む音が、摩尼殿の本堂中にズシリズシリと響きます。
式中、災難除けに「鬼の箸」が配られます。
この「鬼の箸」を断ち割り削って箸として使うと、体が健康になるとか歯が丈夫になると言われています。
そして、見どころは舞う鬼だけに留まらず!
普段お目にかかれない秘仏本尊「如意輪観音」と重要文化財の「四天王立像」も御開帳されます。
静寂かつ神聖な空気を味わえる貴重な時間を是非体験してみて下さい。