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2014/06号

旧丹波街道沿いに点在する、歴史を感じさせる地蔵やお社

（姫路市飾東町）

　姫路市の北東部に位置する飾東町。天川と呼ばれる川が山あいの谷を縫って貫流し、古くは「谷保内」と言っていたが、明治以後は山崎地区以北を「谷内」と言い、塩崎地区以南を「谷外」と言うようになったという。

　現在、天川に沿って国道３７２号線が通っているが、これとほぼ軌を一にしていたのがかつての丹波街道で、西国観音霊場である法華山一乗寺（現加西市）と書写山円教寺を結ぶ巡礼道としても利用されたためか、自然豊かな田園風景の中に時代を感じさせる古い神社や道標などが今も数多く残っている。

　今回まず紹介するのは、山崎にある「苔の清水」。天川左岸の、それとはなかなか気づかない山裾の農道を少し上ったところに湧く清水で、室町時代に播磨の守護大名だった赤松義村が定めた「播磨十水」の1つとしても知られている。残念ながら今はわずかな水流しか認められず、地元の方によれば清水の上方に山陽自動車道が敷設されたことで水の量が著しく減ったのだという。

　その清水の隣に鎮座しているのが「苔の地蔵」。今にも崩れ落ちそうな古ぼけたお堂の中に３体の地蔵が安置されているのだが、右の地蔵には首がない。その昔、丹波街道を京に向かっていた西国の武士がつまらぬ理由から農民を惨殺したところ、急に腹痛が起こり、とある老婆の勧めで苔の清水を飲んでお堂で休んでいると、慈悲深い地蔵までがせせら笑っているように見え、思わず袈裟斬りにして首をはねてしまったという話である。

　お堂の屋根は瓦が崩れかかり、雑草が生い茂り、取り巻く板壁も傷みが激しく、荒れるがままという感じなのだが、映像的にはそれがかえって魅力で、目立つ人工構造物もなく、村はずれの古いお堂の前での武士の果し合いシーンなどにぴったりとハマる。

　次に紹介するのが、苔の地蔵から天川を上流に向かった八重畑地区にある春日神社。こちらも山裾にひっそりと佇む神社で、境内もさほど広くなく、石段を上ったところにある絵馬殿、拝殿、本殿もこじんまりしている。構図的にも周囲の木々や石灯籠、狛犬などともうまくまとまり、饒舌でないところが好ましい。

　神社の西側の墓地の草陰には、すっかり風化して何かしらのオブジェのようにも見える石仏や愛らしい六地蔵、苔むした墓標なども見られ、うまく切り取れば面白い味わいが生まれそうである。