メールマガジン
最新の記事
2012/09号
少し異色な水の景観。工場の畔を流れる運河にも似た川
(姫路市広畑区・大津区)
姫路市大津区の山電天満駅から南東に向かうと、北から南にほぼ一直線に川が流れている。大津区と広畑区の境を流れる汐入川(東汐入川)で、新日鐵広畑製鐵所建設のための広土地区画整理事業の一環として、昭和12年(1937)に東側を流れる夢前川が付け替えられ、併せて改修されたのがこの汐入川である。ほぼ一直線に運河のように流れているのも、その河川改修によるものらしい。国道250号を超えると、川の東側には新日鐵広畑製鐵所の敷地が続き、川沿いに植えられた常緑樹の向こうに工場の建屋や煙突が顔をのぞかせる。工場にもかかわらず不思議と明るく、薄汚れた感じがしないのも、空の青を映し出した穏やかな川面のせいかもしれない。
さらに進むと淡い色彩をしたお洒落なフォルムの汐入川排水機場があり、そこから先もほぼ一直線の流路が続く。岸壁には漁船やプレジャーボートが舳先を連ね、ヨーロッパかどこかの運河のミニチュア版といった風情を漂わせている。何かの場面に切り取れそうな、実にいい感じの空間なのである。
そこからは川の西側も虹技(旧神戸鋳鉄所)姫路東工場の敷地となり、ちょうど川は工場と工場の間を縫って流れるようになる。途中には新日鐵と虹技の工場の間を結んでいた引き込み線の跡もある。今はレールも枕木も草に覆われてしまっているが、それがかえって「廃線跡」のイメージを明瞭なものにしている。
この虹技姫路東工場は昭和36年(1961)に建設されたが(姫路西工場は昭和12年)、有刺鉄線越しに羽目板を貼った木造の建屋も見え、絵になるレトロな雰囲気を醸し出している。
虹技の工場の南からは、それまでと違って道も砂利道に変わり、河口の方に下るにつれ左右の景色も殺風景なものに変わっていく。「関係者以外立ち入り禁止」の看板が見え、その先に進むのははばかられるが、前方遥かにコンビナートのような工場群が見え、先ほどの「実にいい感じの」から、「砂を噛むようなザラついた」空間へと変貌していく。わずか数百メートルの間のこの変化に、映像関係者ならきっとワクワクするのではないだろうか。少し異色な水の景観なのである。
姫路へ行こう!今月の話題はこれ
最新映画のロケ地をめぐる
昨年9月に好古園で撮影された映画「るろうに剣心」が8月25日から全国公開が始まりました。
また、昨年7月から8月にかけて姫路城と書写山圓教寺で撮影された映画「天地明察」が9月15日から全国公開されます。今回は、姫路でロケが行われた話題の最新映画を紹介します。
映画『るろうに剣心』(8月25日(土)全国公開)
主人公の緋村剣心役には大友啓史監督に熱望された佐藤健が務めるほか、武井咲、吉川晃司、蒼井優、江口洋介、香川照之など、そうそうたるキャストで大ヒットコミックを実写。生身のリアルなアクションと深い人間ドラマの融合が人気で、絶賛公開中です。
姫路での撮影は、好古園のロケ場所としておなじみの白い漆喰の塀が続く築地塀の前で行われ、主人公の剣心が倒幕派の暗殺者として幕臣を殺害するアクションシーンが撮影されました。
■撮影日/平成23年9月29日〜30日
■配給:ワーナー・ブラザース映画 (C)和月伸宏/集英社(C) 2012「るろうに剣心」製作委員会
映画『天地明察』(9月15日(土)全国公開)
滝田洋二郎監督待望の最新作は、冲方丁(うぶかたとう)のベストセラー小説「天地明察」。太陽や星を測り、日本で初めての暦作りに挑戦した実在の人物・安井算哲(後の渋川春海)を岡田准一が務めるほか、算哲をささえる妻・えん役に宮崎あおい。
共演陣に中井貴一、松本幸四郎、佐藤隆太、市川猿之助、笹野高史ら豪華キャストが集結。
姫路での撮影は、書写山圓教寺(食堂・常行堂)で、地元のエキストラを多数動員し、安井算哲(岡田准一)と宮栖川友磨(市川染五朗)が京・鹿苑寺で碁を打つシーンの撮影が行われ、姫路城では朝の江戸城、駕籠で登城している武士達で渋滞している江戸城内の職場に向かって、主人公の安井算哲(岡田准一)が走っているシーンが撮影されました。
■撮影日/平成23年7月7日/8月11日
■配給:角川映画/松竹 (C)2012「天地明察」製作委員会