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2012/06号

不思議な魅力を備える、広大な製油所跡地

（姫路市飾磨区）

　姫路市の臨海部の埋め立て地に広がる製油所の跡地。製油所は２００３年に閉鎖され、約１２９ヘクタールもの広大な跡地のうちの約４８ヘクタールにはパナソニックほかが出資した（株）ＩＰＳアルファテクノロジ姫路工場が建っている。２００９年（平成２１）に竣工した液晶パネルの生産を主とする工場である。

　跡地の一画に建つ真新しい工場はシンプルな外観で、周囲を圧するほど巨大だが、残りの大半の土地は更地である。周囲をフェンスと有刺鉄線が人の出入りを拒むように居丈高に取り囲み、中では雑草や灌木が所在なく生い茂り、高圧送電線の鉄塔が長い影を落としている。隣は一級河川・市川の河口で、海にも近く、遮るものがないせいか潮の香を含んだ風が容赦なく頬を打ち付ける。

　外周道路に沿って歩いても、周囲を拒絶するかのような孤高の趣は消えることがない。外部と製油所を隔てていたフェンスの上部にはすべて有刺鉄線が張り巡らされ、門に設けられた門扉は頑丈そのもので、入構者の受付や監視を行っていたと思われる詰所も重々しいコンクリート製。外部とは軽々に交わらないそんな強固な意志が込められているかのようにも思える。製油所という極めて高い安全管理が求められる施設だったせいなのだろうが、「実は昔、ここには秘密の基地がありましてね」と言われても納得してしまうほど、趣のある景色が広がる。

　跡地の一画には事務所棟が残っているが、当然ながら今は人影も見えず、静まり返ったままだが、何か建物だけがタイムスリップして出現したような不思議な感覚にとらわれる。

　ほかにも広大な跡地の内部には、至るところに「通行止」のバリケードやロープがあり、外周道路もごくたまに車が行きかうほかは人影もない。近寄ろうとする者を拒絶するかのような、どこか殺伐としていて無機質な空気感。もちろん、いずれこの製油所跡地は工場用地として再利用が図られると思われるが、それまでの間、背景に取り入れるだけでもサスペンスドラマにぴったりの、不思議な魅力を備えている。