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2011/06号

駅舎、医院跡、路地、病院……。「昭和」の匂いが残る町

(姫路市仁豊野)




 姫路市仁豊野。二級河川の市川と緩やかな稜線を描く山並みに挟まれ、その間をJR播但線と国道が並行して南北に走る、どこかのどかな町である。山の麓には新しい住宅街が形成されているが、仁豊野駅周辺は「昭和」の匂いを色濃く残しており、映像に捉えたいエリアの1つでもある。

 まず仁豊野駅。現在の駅舎は昭和3年に建てられたもので、ファサードの三角屋根がとても印象的。戦前まで時代を遡ることはできないが、昭和40年代頃の駅舎としては充分使えそうで、特に駅の東を走る国道側から見る小さな駅舎はとても好ましい。

 駅を出てすぐ左手に明正寺という寺があり、その正面から国道に向かって小さな路地が抜けているが、路地と国道の角に、哲学者和辻哲郎の生家がある。和辻家は医を生業とした一族で、生家も一部が下見板張りの洋館風になっており、昔の医院の建物・佇まいを偲ばせている。まさに絵になる一画で、国道に面して「春の来た日に和辻哲郎ここに生まれる」と刻まれた文学碑も建っている。

 国道を渡り、路地を抜けていくと市川の西岸に出る。対面に製紙工場の建物などが見え、ゆったりと水量豊かな川が流れている。その川べりに立っているのがムクの老木。その昔は対岸との間に渡し船が通っていたそうで、あるいはこの老木も船頭たちの目印になっていたのかも知れない。

 この川沿いを南に下っていくと、姫路聖マリア病院がある。戦後まもなく開院したカトリック系の総合病院だが、建物にも端整で宗教的な落ち着きが感じられ、何かのドラマのワンシーンに挿入したいという誘惑にかられる。

 もう1つ、駅の反対側に出て北西に歩いていくと山裾に泡子八幡神社がある。仁豊野地区の鎮守で、境内入口には庚申堂や宮型灯籠もあり、ひっそり静まり返った境内や社殿にも味わいがあるが、惜しむらくは社殿がガラスの格子であること。これが映り込まなければ時代が遡れるのにと少し残念に思う。

 さらにもう1つご紹介しておきたいのが、駅から国道沿いに十五分ほど歩いたところにある「姫路ばら園」。イングリッシュガーデン風の民間の施設で、春と秋の季節開園だが、それぞれのシーズンには約800種・3500株の色とりどりのバラの花と香りに包まれる。小粋な感じのガーデンで、さりげないワンシーンやCMの撮影にはもってこいかも知れない。

 これは、と特記するものはないが、「昭和」の匂いが残る貴重な仁豊野エリアと言えそうだ。

姫路へ行こう!今月の話題はこれ

「姫路ばら園」




 姫路市の北部、市川のほとりにある、700坪の敷地に約800種・3500株のばらが埋めつくす光景が広がる「姫路ばら園」は、オーナーが1977年に交通事故で亡くされたご長男のご供養のために作られた、手作りのばら園です。

 開園は、春5月〜6月と秋10月〜11月の季節開園となっていますが、春には明るく、秋には深く、と季節ごとにちがう表情を見せるばら達をぜひ一度味わってみてください。

開園時間(シーズン中は無休)
5月中旬〜 6月中旬
 9:30〜17:00
10月初旬〜11月中旬
10:00〜16:30
入園料
大人500円
小学生300円
各シーズンの詳しい開園時期は、
ホームページをご覧ください。

http://www.himejibaraen.com/

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