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2010/07号
挫折した運河計画。市街地の中心部に残る三左衛門堀
(姫路市豊沢町〜三条町)
JR姫路駅の南口の少し東寄りの地点から南に向かって外堀川と呼ばれる川が流れている。川とはいうが、もとを正せば姫路城を築いた池田三左衛門輝政が瀬戸内海の水を姫路城下に導き、船舶を出入りさせようと工事を起こした運河の名残で、地元では三左衛門堀とも呼ばれている。計画では姫路城の外堀と飾磨津(現姫路港)間の約4キロを運河で結ぶ予定だったが、海面と外堀付近の水位差が10メートル以上もあるという工事の困難さもあり、輝政の死によって中断。延長約2キロの堀が残された(今は途中から野田川と名を変え、飾磨の海に至っている)。
現在、堀の両側は緑豊かな美しい河川公園に変貌しており、要所要所で「市街地を流れる味わいのある川」という雰囲気を醸し出している。
たとえば姫路駅の近くでは、堀の向こうに新幹線の架橋が望め、少し下ると都会の喧噪の中を、林立するビルや高層ホテルの間を縫って流れる川、というシチュエーションが設定できる。
さらに下るとビルのほか、左右には住宅が目立つようになり、桜や松の鮮やかな緑が目にしみる。公園内には遊歩道が設けられており、ウォーキングやジョギングを楽しむ人々の姿も見える。
途中には池田家の家紋である揚羽蝶にちなんだ揚羽橋という趣のある橋も架かっている。交通量の多い市街地の堀なので、当然ながら堀をまたぐ橋の数も多く、遊歩道の一方はその橋の下を潜っている。低いアングルから橋や、その後方に広がるビル群を眺める構図も悪くない。
両岸の緑はますます濃くなり、風までが緑に染まってくる。桜のほか川面に枝を垂れる柳の木もあり、堀端らしい風情がうれしい。
やがて、姫路市役所の東あたりまでくると、両岸に10メートルはありそう大木が並木のように連なっている。特に右岸には大木が2列、3列になってそびえ立ち、周囲の現代風の建物が視角に入らなければ街道筋の絵になるのに、と少し残念な気がしてくる。
そこから南に向かうと、堀は姫路バイパスの下を潜っていく。車の走行音が頭上から重くのしかかり、バイパスと並行して走る側道にもひっきりなしに車が行き交い、その中を堀が文字通り横たわっているのだが、流れを感じさせない水面は都心部の運河といった表情を浮かび上がらせている。
ざっと点描してきた三左衛門堀。「これぞ」「ここぞ」といった売り物があるわけではないが、撮りようによっては市街地に残る堀、都心を流れる川の多彩な表情を掴みとることができる。その意味では「なかなか面白い」スポットだといえるだろう。
姫路へ行こう!今月の話題はこれ
「本格的な工事がはじまった姫路城」
現在、姫路城は大天守保存修理事業の素屋根建設工事が本格的にはじまり、大天守の下層から少しずつ素屋根が組みあがっています。
素屋根を建設するための大型クレーンと姫路城が重なる姿はこの時期しか見ることができません。
素屋根は来春に完成し、その素屋根の壁面を活用して、実寸大の姫路城の線画が南面と東面(幅約47m・高さ約40m)に描かれる予定です。国内最大級の線画の姫路城も今から完成が待ち遠しいです。
大天守が素屋根で覆われている間(平成23年度から約3年間)、内部に見学用のエレベーターが設置され、瓦や漆喰壁の修理の様子を公開するスペースが設けられ、大天守を間近で見学することもできます。
平成23年春頃まで大天守への登閣はできませんが、大天守以外の千姫ゆかりの西の丸などは通常どおり見学できますので、ぜひ姫路城へお越し下さい。
【姫路城の撮影について】
大天守を背景にしないで、門や石垣、城壁などを利用した撮影等は影響なく行えます。「姫路城で撮影したい!」という場合は、まずご一報ください。よろしくお願いします。