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2009/03号
今秋から始まる保存修理工事の前に、捉えておきたい姫路城大天守
(姫路市本町)
ご承知のように、姫路城ではこれまでに数々の映画やテレビドラマのロケが行われてきた。主立つものだけでも、映画では木下恵介監督の「女の園」、ショーン・コネリー主演の「007は二度死ぬ」、内田吐夢監督の「宮本武蔵」、黒澤明監督の「影武者」や「乱」、山田洋次監督の「隠し剣 鬼の爪」、テレビではお馴染みの「暴れん坊将軍」や「大奥」、それにNHK大河ドラマ「武蔵」などで、こうした作品のロケ地に姫路城が選ばれたのは、築城400余年を経ても今なお築城当時のままの構造美、積み重ねてきた歴史の重さが醸す際だつ存在感が映像作家たちの心を捉え、その作品を観る観客(視聴者)にもある種の感動とリアリティをもって迎えられるからに違いない。その姫路城が、大天守部分に限られるとはいうものの、平成21年秋から26年度にかけて実施される保存修理工事によって“姿を消す”。大天守を素屋根で覆い、外壁や屋根瓦の補修および耐震性能評価に基づく構造補強などを行うもので、大天守が姿を消す素屋根の建設は平成22年度に入ってから行われる予定になっている。
ただ、西の丸などは工事から除外され、大天守以外の櫓や石垣、城門や狭間が連なる土塀なども現状のままなので、たとえば「隠し剣 鬼の爪」のように東北の小藩の城の設定で撮影が行われるような場合はさほどの影響は受けないが、江戸城など別の城や架空の城として大天守丸ごとを映し出す場合は、いくらCGの技術が長足の進歩を遂げているといっても、その影響は計り知れない。
「菱の門」を抜けた三国堀あたりから見上げる天守群の優美な姿、西の丸から望む重厚で風格あふれる佇まい、「はの門」西南方から目にする土塀や石段と大天守との美しい構図、「ほの門」手前に出現する大天守と2つの小天守の破風が織りなす直線と曲線の美、戦国期の山城の城門を彷彿させる「との一門」の背後にそびえ立つ石垣と天守群の組み合わせの妙、備前丸を見下ろすように圧倒的な迫力で空の高みに屹立する大天守、備前丸西方から見上げる天守群の各層の屋根と白く塗り込められた軒裏の響き合うような美しいハーモニーなどなど、姫路城ならではのたおやかな景観を切り取るためには大天守の存在は不可欠で、その意味からも大天守が姿を消さないここしばらくロケや撮影のチャンス。
しばし見納めの姫路城大天守。保存修理工事に入る前にぜひお越しください。
姫路へ行こう!今月の話題はこれ
「姫路城大天守保存修理工事について」
姫路市では、平成21年度から姫路城大天守の保存修理工事を開始します。
これは、昭和39年に完了した解体復元工事から45年が過ぎ、白漆喰壁をはじめ上層部の軒やひさしに傷みや汚れが激しくなってきたため、本格的な修理を行うものです。
工事は壁面の修復が中心です。大天守の一〜三層は表面の白漆喰壁を塗り直し、四・五層は下地から修理します。屋根瓦はできるだけ再利用しながら全面をふき替え、くぎや銅線による補強を行うほか、床組みの構造補強などの耐震工事を行います。
修理期間は、搬入用足場の設置を始める平成21年度から丸5年間。平成26年度に素屋根や足場を撤去する予定です。
工事の着手は、今年の10月ごろです。まず、資材の搬入用足場設置のために、天守閣の東側にあります喜齋門橋の補強工事等からとなりますので、平成22年の桜の時期までは、天守閣について、今と変わらない姿をご覧いただけます。姫路城での映像作品等のロケ・撮影については、姫路フィルムコミッションまでご一報ください。