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2008/10号
木造校舎や公設市場……。「昭和」の匂いが色濃く残る町
(高砂市曽根町)
姫路市の東隣にある高砂市曽根町。山電曽根駅のすぐ北にある町のシンボル的存在の曽根天満宮を中心に古くから開け、江戸の頃からは塩田地主や豪商たち住む町として大いに賑わいを見せたところでもある。ほんの2、30年前までは、豪壮な商家や古い民家が味わいのある町並みを形成していたのだが、今は多くが建て替えられ、かつての面影は薄れてきている。その半面、今も色濃く感じられるのが「昭和」の匂いである。
たとえばその一つが、曽根天満宮から少し東の、現在は図書館や教育センターとして利用されている木造校舎。県立松陽高校の旧校舎で、屋根が葺き替えられたり、窓サッシがアルミに変わっていたりもするが、現在は図書館として利用されている木製サッシの旧校舎や屋根の付いた渡り廊下、臭い出し?の煙突が付いた、かつてのくみ取り式の便所なども見られ、アングルによっては充分「昭和の学舎」が再現できる。
天満宮の西方にある曽根駅前公設市場も面白い。今はスーパーマーケットに取って代わられているが、昭和の40年代頃までは、こうした「市場」が各地にあり、一つの大きな建物の中に魚屋、肉屋、乾物屋、豆腐屋、惣菜屋、雑貨屋、花屋などが軒を連ね、威勢の良い呼び込みの声が響く通路を、買い物籠を手にしたエプロン姿の主婦たちが行き交う……といった光景がよく見られたものだ。残念ながらこうした庶民の台所も今はほとんどが姿を消してしまったが、この公設市場はなおも健在で、昭和の庶民の暮らしを描くには絶好の舞台とも言える。
そこから西に歩くと天川で、目前に見えるこんもりとした山が日笠山。春の桜、晩秋のノジギクで知られるが、山頂まで車で上がることができ、そこから見晴らす四方の景色もなかなかのもの。瀬戸の海やかつての塩田跡、さらには奇観を呈する竜山石の石切り場も一望することができ、山腹に建つ社宅も一昔前の風情を残している。
「昭和」という狙いからすれば、天川と日笠山の間に残る木造の工場群も面白い。その昔は織物工場だったのか、特徴あるノコギリ屋根の工場で、今は板金工場などに転用されているが、この一画からも「昭和」の匂いがぷんぷん漂っている。
古い町並み、学校、市場、工場……「昭和」をまとめて撮るという点では、またとないロケ地と言えるかも知れない。