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2007/07号
国分寺跡と円墳。古代と現代が「ない交ぜ」になった不思議な魅力
(姫路市御国野町)
JR御着駅から少し西の線路脇に、周囲から切り取られたような平坦な一画が広がっている。奈良時代に全国に建立された国分寺の一つ、播磨国分寺の跡で、発掘調査により、周囲に築地塀を巡らせた約200メートル四方の広大な寺域の中に、当時の寺院様式に従って南大門、中門、金堂、講堂、僧坊、七重塔などを配した壮大な寺院だったことが分かっている。現在は寺域の南半分が史跡公園となっており、北側に江戸時代に建立された牛堂山国分寺を見ながら、南大門や中門、塔などの基壇跡が一段高く、それと分かるように整備され、築地塀や灯籠などが復原されている。
とりわけ土を搗(つ)き締めた築地塀には趣があり、アングルを絞り込めば歴史ドラマにも耐え得るが、残念ながら視線の抜けがなく、背後の建物がどうしても入ってくる。これは寺域跡すべてに言え、どのアングルをとっても周囲の民家やビルが入り込み、すぐ南側にはJR神戸線の線路と山陽新幹線の高架も見えている。従って歴史ドラマのロケ地としての期待はしぼんでしまうが、逆に古代の遺物が現代と隣り合わせにあることの"不思議"が、この地の面白さを際だたせている。ある日突然、古代からタイムスリップした主人公がそこに立っていたら……と、ついそんな想像をかき立てられるのである。
この播磨国分寺跡の北東に、まわりに周濠を巡らせた全長約140メートル、播磨で最大の前方後円墳、壇場山古墳がある。周濠には湿原によく見られる植物が繁茂し、古墳そのものもまるで森。その森のような古墳に分け入っていくと、辺り一面に広がる緑の木々の間から木漏れ日が射し込み、野鳥やセミの鳴き声が肩に降りかかってくる。
こちらも周囲は民家や高層住宅で、国分寺跡と同様、突然現代の中に古代が立ち現れたような不思議な面白さがある。古墳に分け入る道も石段を除けばもちろん土道で、市街地の中で歴史ドラマに現れそうな道と出会えるという魅力もある。
壇場山古墳のすぐ北には県下では珍しい方墳の山之越古墳、南隣の四郷町には多彩な出土遺物で知られる宮山古墳や、横穴式石室古墳群の見野古墳群もあり、古代の歴史とロマンにふれることができる。